なんてステキな

うずまきナルトが里に帰ってきたというのを耳にした私は平然を装いつつも心の中では喜びと今すぐにでも走って彼を探したいという気持ちでいっぱいだった。それでも任務の最中である私には心の赴くままに行動できる筈もなく、隣で面倒くさそうに欠伸をしているシカマルに批難の視線を向けたところで彼がそのスタイルを崩すわけがないのだ。

終わった、と里に帰った頃には空はもう朱く染まって太陽が自分たちと同じ背くらいにまで沈んでいくところだった。シカマルはナルトに会ってこないのかと聞くものだから恥ずかしさ半分、何で知っているのかと云う気まずさ半分でなんと返せばいいのか分からずに黙っていると痺れを切らしたシカマルが知っているのは俺くらいだと素っ気無く云われた。どうしてシカマルが知っているのと聞きたかったのだけれどそれを聞く前にシカマルが面倒くさいと云って帰路を歩いていってしまったから結局それは謎のままだ。シカマルの云う通り彼に会いたいけれど運よく彼に会える確率なんてこの広い木の葉では運命的と表しても何ら問題はないだろう。

!」

驚くほど高い声に視線を前に向けるとサクラが利き手を上げて私を呼んでいた。そういえばサクラともあまり会っていないと緩む頬、同じように返事をしようとするとサクラの隣には知らない男の人が立っていた。誰、と思い瞬時に浮かんだ人は一人しか居ない。どくんと心臓が一度大きく波打ってサクラへと向かっていた足を止めてしまった。けれど彼等の足は止まらず私の方へと向かってくる。私の頭は混乱して、彼を見た。遠めからだったその知らない男の人は近くになるにつれて確信が持てる、背も顔つきも服装もだいぶ変わってはいたけれどその身に纏う雰囲気は全くと云っていい程変わってはいなかった。木の葉で運命的な確率で彼、うずまきナルトと再開できたのだ。

ぼうと間抜けな表情で突っ立って居る私に対し、とうとう距離が一メートルを切ったところで二人は止まった。私はずっと止まったまま、うずまきナルトを見ていた。何か云わなくてはと口を開いて見るけれど口から出てくるのは空気だけだった。そんな私にサクラは見かねたようで変わったわよねと口を開いた。

「本当、吃驚しちゃった」
「そういうも全然変わってないってば…いてっ」
「あはは、サクラ達とは違って全然変わってないよ私は」

瞬時にサクラの拳がナルト君に向かって飛んだ。変わっていないと云うのは本当で外見も中身も、忍としての強さも少しは昔と違うだろうけれど殆ど代わり映えしなかった。一応中忍にはなったとは云えそこまで強いわけでも、ましてやサクラのように美人に成長したわけでもなく本当に変わらない。ナルト君に悪気があったわけではないと解ってはいたけれど少しだけ痛かった。

「あ、」

何か重要な事でも思い出したのか大きな声を出した彼を見る。ナルト君は私と視線を交わらせて、私は柄にもなくどきどきと胸が痛くなる。何を云われるのかと云うよりも視線が交わったことに対して私はこんなにも緊張しているのだ。

「また宜しくな、

誰が聞いてもそれは只の仲間と交わす挨拶だったのだけれど私にとってその言葉だけで、息が詰まり、脈が速くなって思わず条件反射でナルト君から視線を避けようと下を向こうとするけれど澄んだ青い瞳に私は視線を逸らす事もナルト君のその言葉にも返事を返すことが出来ずにいるといつの間にか隣に来たサクラに横腹を肘で押された。