sunday sundae

勘ちゃん、久しぶりとケエキの入った箱を利き手である右手で勘ちゃんに見せながら笑うと勘ちゃんもつられてお久しぶり二週間振りくらいだねと云った。茶の間の隣にある勘ちゃんの部屋は珍しく片付いていて汚いだろうと身構えていた私は少し驚いた。

「あれ、ヨーコちゃんは?」

いつもなら一番最初に挨拶を交わすのは狐のヨーコちゃんだったのだけれど今日は勘ちゃんの姿を見るまでここの人とは出会っていなかった。どうして、と疑問をぶつけると勘ちゃんはあはは、と笑って誤魔化そうとして手首に付けている鬼を感知する鈴をしゃんしゃんと鳴らしたけれどケエキを隠す素振りを見せるとああ、と呻いた。

「ヨーコちゃんは出稼ぎに行ってるよ、春華は屋根の上で寝ているんじゃあない?」

やっぱり、だから勘ちゃんの部屋がこんなに綺麗なのね。と納得した。原稿依頼が来ている時は必ずと云って云い程部屋が資料だらけになる、それがなく綺麗な部屋と勘ちゃんだけということは今月の原稿は没だったらしい。だから変りにヨーコちゃんが家計のために働きに出て行ったというわけだ。勘ちゃんの前にケエキの箱を置くと嬉しそうに何が入っているの、と笑った。こういう勘ちゃんの顔が見たくて日曜出勤の仕事を早く切り上げてきたなんて口にはせず、抹茶のとチョコレエトとショートケエキだよ、と云って箱を開けるように促した。

「何を食べようかなあ」

と云いながら目をきらきらさせて開いた箱の中身を見つつ考えている勘ちゃんを見ているだけでお腹いっぱい。お茶でも入れてくるよ、と云って台所に立つとヨーコちゃんの頑張りがまざまざと感じられる。それなのに勘ちゃんときたら、と呆れつつもこれが勘ちゃんなのだからと思うと許せてしまう。綺麗にされている食器棚の中からいつも勘ちゃんが使っている湯飲みとお客用の湯飲みを出した。

「勘ちゃん、お茶だよ…って」

襖を開けるとそこには勘ちゃんが幸せそうに一つ目のケエキを食べ終わった頃で口の横には生クリームがついていて子供みたい、とお茶を手渡しついでに指で拭い自分の口に含んだらその抹茶色のクリームはとても甘かった。湯飲みを受け取ったまま目をぱちりぱちりとさせている勘ちゃんになあに、と笑みを向けるとちゃんのえっちと返ってきた。