White Land

サスケが抜け忍になり、それを追っている途中、敵と遭遇し一人また一人と足止めに居なくなって不安が募る私に隣にいたシカマルに嘘か本気か分からないような表情で殺してもしなねえやつらだから大丈夫だ、と云われた。シカマルの向こう側に居たナルトもいつものようなふざける様子もなくシカマルの言葉にこくりと頷くだけだった。風を切るような鋭い音が聞こえ何処からか飛び出してきた敵が思い切り此方へとクナイを何本か放ってきて一番近かった私が全てそれを打ち落とす。きんきんと耳をつんざくような音が数回した後振り向かずに行ってと叫ぶとシカマルの反論が瞬時に返ってきたけれどそれを今考える余裕なんてなく、敵に向かっていく 。此処でシカマルの云う通りにして三人で倒していれば先へと進んでいる目的の人には辿りつけないし何のために私が皆と一緒に来たのか分からなくなってしまう。聞く耳を持たない私にシカマルは何かを云ってナルトと先へと進んでいった。クナイが飛ばされ弾き返す。その繰り返しが何度か続いた後突然相手は笑い出した、私はこんな状況下で笑える程神経図太く出来てはいない。

「何が、可笑しいの」
「あんた、本当ついてないな」
「……」
「もうサスケ様は手遅れだ。しかも俺はあっちの奴等より、強い」

がつんと云う音と背中が焼けるように熱くなった事を感じた頃にはもう自分自身の身体ではないくらい重たくなり、くらりと眩暈がした。駄目と自分を叱咤して起き上がらせようと身体に力を入れる私にそいつはくつくつと愉しそうに笑って傍観している。私はやっと立てた足を力いっぱい地面に貼り付けようと躍起になりながら、得意とする幻術の印を結んだ。相手は笑いを止め瞬時に動き私の後ろへと回ろうとするがそれより一歩此方の印を結ぶのが早く刺し込まれそうになったクナイは背中ぎりぎりの所で静止した。ぽたりと汗が頬を伝って、震える足で間合いを取る。相手はクナイを取り落とし地面に沈んだ、ああやったと笑みが零れる。ふと力を抜いたら自然と足は折り曲がり地面についた。シカマルに褒めて貰わなくちゃと頭で思った矢先背中が焼けるような痛みを覚える。私は目の前で倒れているそれが葉に変わっていくのを見届けると視界の光は零になった。


何度も何度も呼ばれた気がして目を開くと、そこもまた光などなくて夢なのかと一瞬疑ってしまったが頭の中は起きている時以上に冴えていた。シカマル、ナルト、と声を張り上げて暗闇に叫んでみるけれど声は自分に返って来るだけで他の音は何もなかった。そして最後の記憶を思い出すとああ、これが死なのかと自然に受け入れそうになる自分が少し意外だった。死ぬということは自分にとって恐怖そのものだったから、こんなにも簡単に受け入れてしまえているのがなんだかおかしかった。結局私はあの敵を倒すことなく死んでしまった、シカマルに伝えたかった事もまだあるというのに。これが後悔か、と胸に詰まってなんとも云えない気持ちになるけれど涙は零れなかった。

…」
「……あれ…、」

暗かった筈の世界は一変し、視界いっぱいに広がるのはシカマルの顔だった。いつもみたいな面倒くさそうな表情ではなく、シカマルらしくない顔だった。シカマル、どうしたのと声を出すとシカマルは何でもない、と眉を寄せ顔を逸らした。シカマル、私生きてるよ、と精一杯力の入らない頬で笑みを浮かべるとシカマルは莫迦やろうと目尻が光った気がした。

「シカマル、あのね…」