A Happy Life

は振り向いた、そうする事によって背後にいたナルトの姿を目に焼き付けることができたからだ。ナルトは隣にいるサクラと愉しそうに、否愉しくお喋りに夢中だ。こういう時とても疎外感を感じてしまう、と同時にどうして自分がここにいるのだろうかと不思議に思えてくる。は前に向き直って歩みを再開した。後ろで愉しそうにしている二人組みの会話を聴きたくもないのに聴覚に入り込んでくる、その内容は第七班のサスケの代わりに入ったサイがどうしたの、だとかカカシの代理に入ったヤマト体長がどうのとかにはそのどれもが知る事のない人達について、それに入り込めと云われても難しい話でいつの間にかだけが三人の横並びを崩したのだった。昨日三人で同じ任務をこなした後、入院中のカカシ先生のお見舞いに行こうというサクラの提案から今日の今に繋がる。断っておけばよかった、と思っても後の祭りで、今日は任務も予定もないと云ってしまっていたから突然用事を思い出してという断り方は自動的に彼女の脳内から削除された。

ヤマト隊長って怖いのよ、とサクラが唐突に口を開いた。 は自分に問いかけられている事とは知らず前を歩く。さくりと地面を歩く音しかなくなりはそこでやっと自分に問いかけられている事だと知り、慌てて振り向くとそこにはナルトとサクラが目を丸くして見ていた。

「あ、ええと、ごめん…聞いてなかった」

弁解するとサクラはしまったという顔をし、いつもは鈍いナルトもそこでやっとサクラの思った事に気がつく。それを察知したは咄嗟に笑う。

「カカシ先生に最近全然会ってないから早く会いたくて」
「そうよね、は久しぶりよね」

そう云ってサクラはナルトに向き直った。ナルトにしては珍しく眉間にシワを寄せていてサクラはそんなナルトの背中を盛大に叩いて叱咤したそれには苦笑いをこぼすとサクラ達から視線を逸らして前を歩き始めた。再開するだろうと思っていた新生第七班についての会話はそれっきり聞こえてこなくなった。

病院に着くと先頭を切って歩いていたはサクラとナルトの後ろを行く事になり、黙々と歩いた。前を行くサクラは時々後ろを向いてはもう直ぐよ、と云って笑ったそれに同じ笑顔で返す。ナルトは一度だけ振り向き、笑ってこっちだってばとに云ったきりだった。透明なビニールシートがかさり、と云う音ではなく潰れるような音がしたかと思えばそれは自分の手の中にあったお見舞いの為に買った花束の茎部分に包まれたものが潰れた音だった。あ、と声を小さく出したに気づかない二人はどんどん先へ行く。それを慌てて追いかけると潰してしまった袋がかさかさと音を立てた。


「久しぶりです、カカシ先生」
「久しぶりだね、。それにナルトとサクラも」

カカシはマスク越しに三人に笑いかけた、は花束を一度カカシに見せ、潰れてしまってと言葉を濁すのをカカシは笑って許した。花瓶の在り処を聞いた後それらを持って病室を出たに続いてサクラも手伝ってくるわと云って遅れての後を追って病室を出て行った、それを見届けたナルトとカカシは必然的に二人きりとなった。久しぶりに会う、と云っても一週間前もここに来たナルトにとってはそこまでカカシに対して云う言葉も見付からず近くにあった椅子に腰掛けた。ナルトにしては珍しく言葉数少ない、カカシはそれを見やり、怪しげな本を手にしていた腕を下ろした。何を話そうか、分からないような表情をしたナルトにカカシは目を細めマスクの下で唇の端を上げた。

「ああ、お前もそんな年頃になったわけ、ね。道理で俺も年をとるわけだ」
「…なっ!カカシ先生、分かっていてそれはないってば!」

ナルトは急に頬を朱く染め上げて逸らしていた顔をカカシに向けた。朱くなったその頬を見てカカシは更に面白そうにマスクにシワを作る。ああ、だからかとカカシは一人で納得する。さり気無い行動でも重ねている年が違うカカシにはそれがどういうことか分かってしまう。朱さが引かない頬に気づかないナルトはカカシから視線を逸らすと幼少期の時のような拗ね方をした。ああ、ナルトそんなんじゃあは気づいてくれないよ、と口を開こうとしたら運悪く綺麗な花を沢山生けた花瓶を持ったとサクラが戻ってきてしまい、それは叶わなかった。