Romantic connection

エドの事が前から好きだった。エドがこれが好きと云えば私もそれが好きになれたし、エドがこれが嫌いと云えばそれが嫌いになった。だから今でも牛乳は駄目、だけれどもシチューは大好きだ。だけれどもたった一つだけエドが好きでも私にとっては嫌いなものが確かに存在していたことに気がついたのはもう暫くの事。私とエドとアルとウィンリィは所謂幼馴染と云うもので私はよくエドの後をついて歩いていた。私はエドと一緒にいれることが楽しくて嬉しくて少しだけどきどきした。錬金術を勉強すると云い始めた時も、同じようにエドとアルの三人で朝から夜まで錬金術の本を読み漁ったし、錬金術の教えを貰いに行くというときも一緒に行った。エドとアルのお母さんが亡くなってから直ぐの出来事だった。私はウィンリィよりも近くでエドとアルと共に過ごしていたのにも関わらず気がつかなかった、二人のしようとしていた事に。錬金術の本を読んでいく内にそれが万能でない事や、錬金術者の禁忌、何かを得るためには同等の代価と云うものが必要だということが分かり同時に錬金術は私の中で畏怖の存在だと云う事に気付かされながらもそれを口にする事はなかった。

エドとアルが禁忌を犯したのはいつも通り私が二人の家から出た後だった。なんで云ってくれなかったのと一人と腕と足の分は戻ってくることなどないことを知ってはいても聞かずにはいられなかった。アルはエドの血液を鎧にこびり付かせたまま母さんを、とだけ云い消えるように空気に溶けていったその言葉の意味を直ぐに理解した私はどうしようもなく悔しくて同時に外の豪雨のように泣きたくなった。笑顔の裏にあった真実を私は見抜ける事が出来なかったのだから。アルは前のような小さな身体じゃあなく大きな鎧を魂の入れ物にした。エドは暫くして機械鎧をつけ、元の前の生活に戻ってからも私たちの位置は変らずに存在している。ただ一つ、あの時以来から私の中に湧き上がるものの正体が霧の中から姿を現し始めていたことを覗いては。

「エド、どうかしたの」

集中の途切れているエドを感じ、本から顔を上げるとエドはじいと一点を見ていた。私はその視線の先にあるものを見ようと同じように道を辿るとそこにはウィンリィとデンが楽しそうに走り回っている姿だった。エド、の視線は悲しそうで、だけれども少し優しげでいて私はそんな視線を向けられているウィンリィ自身が気がついていないことに対する滞りのようなものと、羨ましさがふつふつと胸に湧き上がっていくような感触がした。これは何なのかと愉しそうにするウィンリィを見ながら思うと同時に私はエドが好きなんだと、気がついてしまった、そしてあの時私の胸に植えつけられた気持ちはこれなのかと同時にこれが叶わないことを知る。どうしたらいいのか急に分からなくなり頭が真っ白くなる。エドが向けているものから視線を外し、膝に乗せてある本を手前の机に置いた、集中できない事を自覚しているからだ。心臓は前へ突き出た後、後ろへと戻るその繰り返しに頭はぐるぐるし、もう先程のように簡単にエドの名前が呼べなくなっていて、私はウィンリィに集中しているエドに気付かれないように椅子から腰を上げた。


それからだエドが大好きなウィンリィを、私も大好きだった筈なのに一番嫌いになってしまった。エドの家から飛び出して走って、途中生えている草に引っ掛けて足を切って少しだけ流れる血を足にべたりとつけたまま家へ帰った。その二日後、エドとアルは家を燃やしてリゼンブールからいなくなってしまったのは。