何が善いのか、分からぬまま彼女を汚した。聖職と云う立場でありながらつい数時間前に起こしたものはそれから最も離れている事だと自負する。清いものだとは云うが、そこに人が絡めば途端に白は汚されていくからして聖職と云うのは人間に対して、その中でも己に対し表現に使って善いものなのか甚だ疑問だ。そうだ、自身は何処までも闇に染まっている、それは幾ら自身に誓約を提案したダンブルドアの詞を胸に摩り込んだ処で何等変わる事はない。そうなると滞りを感じるのだが仕方はない、真以外の何者でもない。ポッターが本能的に我輩を避けて行くのは、白を闇に染めるのが厭であるからだと解釈する。が、しかしその手前唇が勝手に意思を持ち子をけなすのだからどちらにせよ、避けて通りたがるのは変わりはしない。
彼女は我自室のマグルで云うスプリングの入ったベッドの上で深い眠りに入っている。勿論その夢が望まれて見ているのではなく、汚された事による精神的疲労と初体験だと云うのに理性を押さえつける事が出来ずに気の済むまで彼女を揺さぶったのが今、彼女が眠りについている原因と云えよう。何度も新たな頬に涙痕が出来る度に嗚呼、と声を漏らす自身は彼女を支配したという至福に包まれているのだろうと至って冷静な判断が出来ているのにも関わらず身体は身勝手だった。否、本能と云うべきか。
「…すっ…!」
ベッドの軋みからしてそろそろ眼を覚ますであろうとは思っていたがその通りに彼女は眼を覚ましたようだ。スプリングが軋んだ。視線を上げれば彼女は思ってみなかったのか声が全く出ない自身の声帯に驚きを示し、指先を首にやっていた。当たり前だ、あれ程の事をしたのだからと腕を組んだまま彼女の様子を遠目で窺う。
視界の端で捉えられた我輩の漆黒に彼女は視線を扉まで寄せようとするが止まる。言葉を発する事も止め、しばしの時を費やした後覚悟を決めたように視線を合わせた、涙で潤された眼は情熱を孕んでいるように見えた、がそれは彼女の意図していないものだろう。また身体の芯がじくりと疼きだすのが分かった、腕を解き彼女に近付く事をすればベッドに沈み込んだままの身体は精一杯の抵抗を示した。それが無駄な体力を消耗するだけとは気付かぬのだろうかと彼女を見下ろす自身は何て酷な事を強いているのかと思案すればそこから何故か熱が生まれる。
「や、だ!」
「それが無駄だとは思わぬのか」
「…っせぶ、る」
「名を呼ぶな」
「…!」
元々落ち込んでいる身体を自身の力を込めて更に下に落とした。硝子玉のような涙が染み込んでは染みになって割れた。嗚呼、己は壊す事でしか彼女を、否全ての事に対し破壊をしなければ愛を注ぐ事が出来ぬのだろう。何て哀しい生き物だ。愛している女でさえこの腕で、言葉で優しく出来ないのだから。