今日はハレルヤ、

彼は笑って私をたやすく、呆気なく追い越していくんだろうそして銀色の髪の毛を持つ彼を先輩先輩と云って周りから見たら崇拝してるようだと囁かれるくらい好きなんだ。尊敬しているんだろう。一歩先どころか見えなくなりそうな所まで行ってしまっているように見えてしまう、彼に自覚なんて持ってないんだろうけれど。

ぎゃ、色気もない叫びがお風呂で響く。入っている方ではなく扉を開けた方が軽くパニック状態になりそうだというこの状況下に扉を開けた方はなんでもないといったふうに一言詫びを入れてお風呂の扉を閉めた。

「…って髪の色!」
「……煩い、テンゾウ」

お風呂場から出てきて一番に聞いた声は非難っぽく云うテンゾウの声だった。
一喝すると納得いかない表情はしているがぴたりと黙ってくれた、元々饒舌な方ではないテンゾウだからそこまで云う程煩くはならないのだろうけれど、蟲の居所が悪かった私にはそれさえも煩わしかった。

自毛はテンゾウと同じ黒だったのだけど今の私の髪の毛の色は見事な銀髪だったりする。キナ臭い誰かの髪の毛と全く同じ色になっていることが気に食わないのかテンゾウはその崩れた表情のまま残るんじゃないのかというほど強く眉間にシワを寄せた。似合う訳ないことくらいわかっているからテンゾウが口を開く前に自分の言葉をかぶせた。

「私がどんないろにしてもテンゾウには関係ないでしょ」
「……」

可愛いげない私は自らその泉に飛び込んでいく。
テンゾウは呆れからくるため息を吐いて口内で何かを呟いたがキナ臭い誰かみたいな写輪眼という凄いものがあるわけじゃないから口の動きだけでは読み取れなかった。そういえばなんで此処にテンゾウが、と云う前にそれを察したテンゾウは口を開く。

「カカシ先輩が、さんを迎えに行けって。午後から任務でしょう、僕ら」

僕らというのはキナ臭いこと、はたけカカシさん、目の前にいるテンゾウそして私だ。
午後からだという任務にまで時間はまだある筈だと時計を見ると針が丁度九の数字を差した頃だった。任務にはまだ早い筈だけど、と棘を含んで云うとわかっているのかわかっていないのかテンゾウはカカシ先輩がそう云ったから仕方なく来たんですという言葉が返ってきた、またキナ臭いカカシさんの名前を出してテンゾウは不本意だと感じているらしいけれど内心きっと嬉しいに違いない。

どうせそんなことだと思ったと呟いてソファーに投げやりに腰を下ろすとふわりと浮いた髪の毛が視界に入ってきた。頬から落ちていく髪の毛の色はどこを如何見ても銀色。銀色とキナ臭い誰かを浮かべてしまうのはもう必須。自分で染めておいてなんだけれども気に食わなかった、そして視線をテンゾウに向けると奴に至っては私に向ける視線は真剣そのものだからその見えぬ圧力に後ずさりしたくなったけれど背後はソファーだ。

「黒髪のさんもよかったですけど、銀髪も似合ってます」
「…っう、ウソツキ!」
「嘘でこんなこと云えませんよ、僕の為でしたことを何故怒らなくちゃいけないんです?」
「……」

テンゾウは始めから知っていたかのような口ぶりに音も出さないのに口を開く私を可笑しそうにする。私がキナ臭い誰かに嫉妬していたことが端から彼にはばれていた、それに恥ずかしくソファーに置いてあったクッションを二つ、三つと彼に投げるが忍がそう易々と当たるなんて思ってない、テンゾウは軽々と避けそれを三つ全て受け止めて睨みつける私に珍しい笑みを見せていた。驚いて固まると術でも使ったのかと思う程俊敏に私の目の前に来てはちょん、と可愛く唇をのせたその行動に目を見開くとテンゾウはしてやったりという意地悪い表情になった。出て行けと返してもらったクッションを投げるとテンゾウは大人しく窓から出て行った、顔なんてもう見れたものじゃない。

「あれ、さん。髪の色、黒なんですね」
「んーちゃん元から黒じゃなかったっけ?」
「………」

200900531[明日もきっとハレルヤ]