キンコンカンコン、と頭から中々離れそうにもない学校のチャイムが鳴り終わったのはかれこれ三十分前のことだ。それだと云うのに昇降口から一歩も先に出ることが出来ずにそこで雨が止むのを待ちぼうけ。今朝見たテレビでは思い切り今日は晴れだからと云っていた癖に帰る時間になった途端空から大粒の雨が大量に降ってきた。「嘘つき、もうあの天気予報信じない」一人ぽつんと残った雨の中どうしようもなく外を見ることで時間を潰すしかなかった。教室は最近問題行動が多いからと片っ端から鍵を閉められている為に行く場所もなく下駄箱で靴と戯れるか先ほどのように雨空を見ているしかすることがない。

、か?」

靴をかこん、とコンクリート製の地面に叩きつける音と廊下のきゅ、と云う音が重なった。振り向くと安倍先生が訝しげに此方を見ている。なにやってんだと云う言葉にばつが悪い訳でもないのに私はうろたえてしまった。「あ、いや…傘を忘れてしまったので」少なくとも私一人じゃない筈、あの天気予報を見た人は。いつも貸し出し用傘置き場にパンパンに入っている傘が今日に限って一本も見当たらないのだから。安倍先生の顔が莫迦もん、と云う顔になったのを見てむすりとする。

「ちゃんと天気予報見ましたよ、」
「じゃあなんで傘を持っとらんのだ」
「今日、晴れだって云っていたので…」
「莫迦もん、今朝の空の様子を見ていれば今日が雨だと云うことくらいわからんのか」

莫迦もんともう一度云われて流石に云いすぎじゃないの、と思ったけど確かに空を見れば分かることだった、安倍先生の云い分の方が正しい。眉と眉の間に小さなシワが刻まれるのを見て反射的に口からすみませんと云う言葉が出ていた。謝れとは云っとらんと口を逆に弧を作ると背中を見せて教室にでも居ろ、開けておく、と云って歩き出して行ってしまった先生の背中を暫く眺めていた。

雨宿り仲間

2010.01.16