※あなたのやさしさは似ている.ヒロイン


下手すると安部先生の声の方が大きいのではないかと云うくらいの大音量で先生の声が耳に入る。何でこんな状況下に置かれてしまったのかとどくどく云う心臓の前では考えが出てこなかった。ぎゅっと安部先生の腕が私の背中に食い込むように強く抱きしめられる。耳元で安倍先生が莫迦やろうと悪態をつくのに対し私は近すぎる先生の体温に意識を持っていかれていた。学校の外はやけに激しく雨が地に打ちつけているのが聞こえるけれどそれ以上に近すぎる体温と声の方が大きい。安倍せんせい、と緊張で掠れてしまった声に安倍先生は驚いたように私を見たかと思えばそっぽを向き私から先生の顔が見えなくなる。もう少しでも私が動こうとすればバランスを崩して外に出てしまうだろう、それを阻止するように先生の腕は更に強まり胸が先生の胸板に思い切り押し付けられた。

と云う夢を見たの、と安倍先生に打ち明けると莫迦やろう、と返ってきた。私はリアル過ぎたその夢を見た朝は心臓がばくばく云って二度寝する事が出来ず、学校で寝てしまいあろう事か安倍先生の授業で寝てしまったその所為でこうして補習を受けさせられているなんて云いたくなるんです。

「なんだ、欲求不満か?」

厭らしい笑みを浮かべて教科書を持っている先生に朱くなった顔で否定したら、あっさりとかわされて次の問題、と云う真剣な教師の声に変わった。私は何であんな夢を見たのかと何で本人に話してしまったのかと云うことで意識が行ってしまって安倍先生にまた教科書で殴られた。

西の空が明るくなってきた

2010.03.22