しとしとと降っていた雨は突然バケツ一杯以上の量となって頭を襲撃した。服か肌か分からなくなる程に雨を浴びて家の鍵を開ける前に鍵がひとりでに開いた。ぽたぽたと毛先から水が落ちてはの繰り返しの彼の髪の毛、全体の状態を見て彼女は可笑しいくらいに慌ててタオルを取りに部屋を走って行った。
「もう、傘がないのならコンビニでもあるでしょう?」
ソファーに座らされて髪の毛を優しく拭きながら怒る彼女に面倒くさかったからと答えようとしたのがばれたらしく云う前に云われた。面倒くさいなんて云い訳にははいらないからね、と呆れた口調で云われるその言葉に黙ってやり過ごした。
「大事にして、忠義さんだけの身体じゃあないんだから」タオルでがしがしとされていて顔が見えないがはきっと眉を八の字にしているのだろう。手に取るように判ってしまうのも悪くないと感じながら彼女の手を掴んでソファーに倒すと思っていた通りの表情をしていたものだから勝手に口の端があがっていく。
「お前さん、口調に反した表情じゃねえか?」その言葉は少しずつ小さくなっていき最後の方は彼の想像となっていた。それでも大体何を云ったのかは表情が語っている。それだけで判ってしまえる彼にとってとても容易いことだろう。隣で髪の毛を拭かれるのを黙って見ていると大きな目が更に大きくなるのを頭で思い浮かべながら彼は彼女に顔を近づけていく。