は笑って好きだと云う、太公望は、と。それを軽くあしらう曖昧な笑みをいつものように浮かべると悲しそうに顔が歪められる。それを知りつつ太公望は彼女のその好意を受けとる事はしなかった。愚問は受け付けぬ、と太公望は何故と疑問を口にする彼女に云い放つ。それでも彼女は笑ってそう、とだけ云いまたその繰り返し。好きだと笑えばそうか、と云う。抱いて、と云われるならば出来ぬと答える、何故、何故、何故、と疑問を口にする彼女には飽いてきた。真の事は彼女自身が知っているというのにそれを知りえていないかのような顔をする嘯き者だ。好きだ好きだと云って来る癖に此方から好きだと云えば、好きではないと返って来る。どうしたら善いのだと疑問を口にすればそういうのは好かないと云われ何処かへ飛んでいってしまうは天女のようであり自由気ままな猫のようでもあった。彼女は自身の事等好いてはいない事などとっくの昔に知っていた、それでも思わせぶりに近づいてきては好きだと、愛を紡ぐ嘘吐きを追い払う事も出来ずに太公望はさして傷ついていない彼女の背中を見続ける。

(此の心地良さを手放すなど、もう、)

(20100717)(×)(とうに知っていた事ではないか)