沈んでいく身体を持ち上げようと腕を掴んだけれど持ち上がるどころか自分も一緒になって落ちていくだけだった。涙を一粒落として彼に叫んだが彼は気づくことなく落ちていく、ひゅるりひゅるりと。可笑しなことに浮遊感というものがなく気分が悪くなることはなかった、しいて云えば何も紡げない唇がとても気持ち悪かった。力を入れてみても二人一緒になって落ちていくのだから意味などなく、彼を再度呼んでみても返ってくるものはなし。答えは至って簡単だ、声にしていないのだから彼に届く筈もないのだ。私がもしここで彼に声を響かせたのなら彼は私を見てくれるのだろうかと思ったらそうじゃない自信の方があまりにも大きすぎていたから云う言葉は何一つもない。(わしはおぬしを悲しませることしか出来ぬ)云いのにそんなこと、彼さえいれば私はどんなに悲しんだって平気なのにと云った筈なのに彼にはずっと届かない。受け入れてくれない、私は弱いから置いてかれるのと云ったらすっぱりと切り捨てられた。海底に沈む感覚が身体中を巡った、彼は私を見ることなく落ちていく。深く深く、海底へと。同じ場所のようで皆目違う海へと。(師叔)私を置いていかないで、眠りにつくのなら私も連れて行ってと云いたかったけれど否定されるのが怖くなってまた唇に乗せて云うことができないかった。

(ひとりで目を瞑らないで)

(20090901)(×)(貴方のことが、)