「楊ゼンが好きなんだけれど」

と云うと目の前に居た太公望の唇がめくれ上がった。 そんな顔しなくてもいいじゃないのと云ったら太公望は何故楊ゼンなのかと尋ねてきた、そりゃあ楊ゼンは背も高いし美形だし髪の毛サラサラだし清潔だしもちろん足も、指だって長い。太公望と天と地の差よね。最後の言葉は口にはせず楊ゼンの美点だけを太公望に伝えたがきっと私が思っていることを頭に浮かべているんだろう。頭がいいのはたまに、考えようだ。

、おぬしわしがあやつに劣っているとでも…」
「だって、そうじゃない」
「おぬし…わしにも心があることを忘れておらんか」

解ってますが、そんなことで傷つく貴方ではないでしょう。その証拠にめくれ上がっていた唇は元に元の位置に戻っていて言葉の割には口元はゆるゆるとしている。なんなんだ、本当にもう。頭がいいのは本当に考えようだ、そのおかげで私が思っていること、云った言葉の裏までちゃっかりと読んでいらっしゃるのだから。

「そうか、わしの事がそんなに好きか」

確かに美点を兼ねそろえた楊ゼンに比べたら太公望なんてミジンコくらいの美点しかないのかもしれないけれど私はそんな貴方の方が何でも素敵に見えてしまうし、楊ゼンに嫉妬してしまうのだから世話ない。グローブでいつもは良く分からないけれど、外した時の以外に男らしい指に、どきりとしてしまった。

(あなたの長いゆびがすき)

(20100215)(×)(ゆびだけなんて云わず全てすき)