「莫迦!」 こんな下らない事を現在進行形で云い合っているのは仙人界の中心となる元始天尊の一番弟子太公望とその二番弟子だった。その間に挟まって二人を宥めようと早々に諦めたのは見た目そこ等辺に飛んで居ても全くの違和感の無い鶴である白鶴童子と頭上に天使の輪をかけているだけあってその持ち主もほんわりとした雰囲気を体外へと放出している、この中では一番上を行く出世頭である普賢真人。稚児でもこんな不毛な悪口の云い合い等しないと云うのにこの二人は自身の年齢にそぐわぬ事を全く恥もせずに唇から止め処なく洩れる幼稚な戦いを続けていた。後どれ位で終わるだろうと白鶴と普賢は目の前の険悪な雰囲気に呑まれるでもなく緩やかに会話をしていた。
「後どれ位で終わるでしょうかねえ」
元を辿れば何でこうなったのか、二人には全く検討がつかなかった。 「何さ、私が他の人と居る時には目聡く見つけて邪魔する癖に!私だって他の人と遊んだり話したり修行したりしたいのに、太公望とばかりじゃあ詰まらないわ!それに太公望だって私以外の女の人と愉しそうにして居る時だってあるじゃない!それはいいの!?」 「おぬしには危機感というものが無いのだ!あやつが下心丸出しでおぬしに近づいていたのをわしが食い止めてやったというのに!かの女人は解らぬ体術があるというから教えてやっていただけだ、別に愉しんでいた訳ではないわ!」
「そういうならあの人だって太公望に下心丸出しだったわよ!気が付いてない人に私の事云えないわ!」 そして堂々巡りという事に頭に血が上りきっている二人は気が付かないらしいし、お互い相手側に近づいてくる輩に嫉妬という感情を抱いている事を露見していると云うのにも全くもって解っていないらしい。聞いている二人からすれば善い迷惑とは云わずも痴話喧嘩をこうも煩くしていたら敵わない。普賢と白鶴はどちらともなく溜息を吐いた、嗚呼しまったとお互いが思った時には顔を突き合わせている二人は恐ろしい形相で此方を見、火を噴いた。何て理不尽な飛び火を食らった二人はひっそりと言葉を交わした。
「本当、素直じゃあないですね」 (どうせなら愛してると叫べば良い)(20110125)(×)(そうしたらまた違う意味で鬱陶しくなるだろうけれども) |